このページの要点
- IVRとは:かかってきた電話に録音音声で応答し、番号のプッシュ操作で用件を分岐させる自動音声応答装置。月額800円〜5万円程度と安価で、安定して動く
- AI電話との本質的な違いは「押させるか、話させるか」:IVRは決めた分岐しか辿れず、相手の話を理解できない。AI電話は自由な話し言葉を聞き取り、用件のヒアリングや回答、手続きまで進められる
- IVRで十分なケースは明確にある:振り分け先が3〜5個で固定、営業時間案内が主目的、コストを最小にしたい場合はIVRが合理的
- 置き換えのサイン:「オペレーターにつながる番号ばかり押される」「分岐が増えて迷子になる」「聞き取りが必要な用件が多い」の3つが出ていたら、IVRの限界を超えている
IVRとは何か
IVR(Interactive Voice Response、自動音声応答)とは、かかってきた電話にあらかじめ録音・合成した音声で応答し、発信者の番号プッシュ操作(プッシュトーン)に応じて、案内の再生や担当窓口への振り分けを行う仕組みです。「ご用件の方は1を、それ以外の方は2を押してください」という、誰もが一度は聞いたことのある応答がIVRです。
IVRは数十年使われてきた枯れた技術で、動作が安定しており、費用も安価です。一方で、できることは「あらかじめ設計した分岐を、番号操作で辿らせる」ことに限られます。発信者が何を話しても、IVR自体はその内容を理解しません。この「聞いて理解することができない」という性質が、後述するAI電話との本質的な分かれ目になります。
IVRの仕組みと料金相場
IVRの構成はシンプルです。着信を受けると音声ガイダンスを再生し、発信者のプッシュ操作を検出して、設定されたアクション(別のガイダンス再生・担当への転送・録音受付・SMS送信など)を実行します。近年はクラウド型が主流で、ブラウザから分岐フローを設定できます。
料金相場は月額800円〜5万円程度です。小規模事業者向けの安価なプランでは、営業時間外の案内や着信の振り分けといった基本機能が月1,000円前後から使えます。上位プランになると、複数番号・複数フロー・通話録音・SMS送信・外部システム連携などが加わります。同じ「電話の自動化」でも、会話型のAI電話やコールセンター規模のボイスボットとは価格帯が一桁以上違うため、まず自社に必要なのがどちらの層なのかを見極めるのが検討の第一歩です。20サービスの料金公開状況は費用相場の調査ページにまとめています。
IVRとAI電話(ボイスボット)の違い【比較表】
番号を押させるIVRと、話した内容を理解するAI電話の違い。用件の幅・顧客体験・費用がここから分岐します。
IVRとAI電話の本質的な違いは、「番号を押させる」か「話させる」かです。この一点から、対応できる用件の幅、顧客体験、費用のすべてが分岐します。
注意したいのは、市場では「AI搭載IVR」「音声認識IVR」のように両者の中間的な製品も増えており、名称だけでは区別できないことです。判断基準は名称ではなく、「相手が自由に話した内容を理解して、次のアクションを変えられるか」で確認してください。用語の整理はAI電話対応とはで詳しく扱っています。
IVRで十分なケース
AI電話が実用になったいまでも、IVRが合理的な選択であるケースは明確に存在します。当社はAI電話の提供事業者ですが、以下に当てはまるならIVRをおすすめします。
- 振り分け先が3〜5個で固定されている — 「営業は1、サポートは2」で迷いなく振り分けられる構造なら、IVRで十分です
- 主目的が営業時間外の案内 — 「本日の営業は終了しました。営業時間は〜」を流すだけなら、月1,000円前後のIVRが最も費用対効果に優れます
- 聞き取りが必要な用件がほとんどない — 発信者から情報を聞き取る必要がなければ、AIの理解力は過剰装備です
- とにかくコストを最小にしたい — IVRの月額は AI電話の従量費を含めた総額より確実に安く収まります
今のIVRのどこをAIに置き換えるべきか現行IVRの操作ログから、置き換える分岐と残す分岐の切り分けをお手伝いします。併用構成のデモ音声もご案内します。
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IVRからAIに置き換えるべき3つのサイン
逆に、次のサインが出ていたら、業務がIVRの設計限界を超えています。
- 「オペレーターにつながる番号」ばかり押される
用件が分岐メニューに収まっておらず、発信者が「とにかく人と話す」を選んでいる状態です。IVRが振り分け装置ではなく、単なる待ち時間になっています。
- 分岐が増えすぎて迷子が出ている
用件が多様になるほどIVRのメニューは深くなり、「該当する番号がない」「聞き直したい」という離脱が増えます。番号操作は3階層を超えると顧客体験を大きく損ないます。
- 聞き取ってから対応を変えたい用件が多い
「物件名と号室を聞いて緊急度を判定したい」「注文番号を聞いて配送状況を答えたい」のように、発信者の情報を聞き取ってから対応が決まる業務は、プッシュ操作では構造的に処理できません。
実際の導入現場でも、番号操作そのものが体験を損なうという判断は現れています。当社の導入事例である宝宮設備様は、IVRも検討したうえで「番号を押させる形は顧客体験を落とす」として見送り、会話型のAIを選んでいます。
置き換え・併用の進め方
IVRからの移行は、全面切り替えである必要はありません。現実的な進め方は3段階です。
- 現行IVRの操作ログを見る
どの番号が押されているか、どこで切られているかを集計します。「オペレーター行き」と「途中切断」の割合が、AIに移すべき用件の量をそのまま示します。
- 聞き取りが必要な用件だけAIに移す
営業時間案内のような定型再生はIVRのままでもかまいません。ヒアリングが必要な一次受付だけをAIに置き換える併用構成なら、費用の増分を最小にできます。
- 自動化率を測って範囲を広げる
一次ソースで確認できた27事例では、AIによる自動完結・自動化率は34〜96%です。代表電話の一次受付は50〜60%台、用件が定型化した業務では90%超が実勢です。自社の数字を毎月見ながら、任せる範囲を広げていきます。
実例:IVRを見送って会話型を選んだ判断
エアコン工事・給湯器交換の宝宮設備様(神奈川県厚木市)は、設置後フォローの受電が1日20〜50件あり、内容は「エアコンが冷たくならない」から「工事のときの忘れ物」までさまざまでした。用件が多様で聞き取りが必須のため、番号分岐のIVRでは受け皿になりません。
会話型のAIを導入した結果、用件・工事日・氏名を対話で確認してLINE WORKSへ自動通知する運用になり、受電の約9割をAIが完結。人が受けるのは緊急・要判断の約1割だけになりました。立ち上げは約1週間です。詳細は導入事例の詳細ページで公開しています。
大規模側の実例では、東京ガスが住所・漢字氏名の聴取という音声認識の難所をSMS併用で回避し、2024年3月の繁忙期にAI対応完了率最大96%を達成しています(トゥモロー・ネット公式リリース)。「聞き取りが必要な業務はIVRでは無理、ただし音声だけで粘らずSMSに逃がす」という、置き換え設計の到達点を示す事例です。
よくある質問
IVRとボイスボット、AI電話は何が違うのですか?
IVRは番号のプッシュ操作で固定分岐を辿らせる仕組みで、相手の話を理解しません。ボイスボット・AI電話は、相手が自由に話した内容を音声認識して意図を判定し、ヒアリングや回答、手続きまで進められます。ボイスボットとAI電話はほぼ同義で使われており、明確な定義差があるのはIVRとの間だけです。名称に「AI」と付いていても実態がプッシュ分岐の製品はあるため、「話した内容で対応が変わるか」で確認してください。
IVRの料金はいくらくらいですか?
月額800円〜5万円程度が相場です。小規模向けの基本機能(営業時間案内・着信振り分け)は月1,000円前後から使えます。会話型のAI電話は中小企業向けの公開価格で月額0円〜1万円台+従量課金、コールセンター規模のボイスボットは大半が非公開・個別見積です。層によって価格帯が一桁以上違うため、必要なのがどの層かを先に決めるのが確実です。
今のIVRを残したまま、一部だけAIにできますか?
できます。むしろ併用が現実的な進め方です。営業時間案内のような定型再生はIVRに残し、聞き取りが必要な一次受付だけをAIに置き換える構成なら、費用の増分を抑えながらIVRの弱点だけを解消できます。現行IVRの操作ログで「オペレーター行き」と「途中切断」が多い分岐から移すのが定石です。
IVRからAIに変えると、自動化率はどのくらい上がりますか?
対象業務によります。一次ソースで確認できた27事例の実勢は、AIによる自動完結・自動化率で34〜96%です。代表電話の一次受付は50〜60%台に集まり、社宅管理のように用件が定型化した業務では90%超の例(東急社宅マネジメント「一次受付の90%超の自動化」)があります。IVRは振り分けまでで用件を完結できないため、「振り分け後の対応まで自動化される」分が上乗せになります。
高齢の利用者が多いのですが、IVRとAIどちらが向いていますか?
番号操作が負担になりやすい層には、普段どおり話すだけで進む会話型のほうが操作の壁は低くなります。実際に、番号を押させる形は顧客体験を落とすという判断でIVRを見送り、会話型を選んだ導入企業もあります。一方で、ゆっくりした話し方への追従や聞き返しの自然さは製品差が出るため、デモで実際に試すことをおすすめします。人につながる経路を残す設計はどちらの場合も必須です。
IVRで録音受付(伝言)にしている電話は、AIにすると何が変わりますか?
録音は「あとで人が聞き直して、かけ直す」前提の仕組みで、対応は翌営業日以降になります。AIの一次受けは、その場で用件・氏名・連絡先を聞き取って構造化されたテキストで通知するため、聞き直しの工数がなくなり、緊急案件はその場で担当者へ取次げます。録音と全文テキストの両方が残るため、言った言わないの確認にも使えます。
まとめ:IVRか、AIかは「聞き取りの有無」で決まる
IVRは安価で安定した振り分け装置であり、固定分岐と定型案内で足りる業務では今も最適解です。一方、発信者から情報を聞き取ってから対応が決まる業務は、プッシュ操作では構造的に処理できません。「オペレーター行きばかり押される」「分岐で迷子が出る」「聞き取りたい用件が多い」のサインが出ていたら、その部分だけでもAIに移すことを検討してください。全面切り替えではなく、IVRとの併用から始めるのが費用面でも現実的です。
今のIVRのどこをAIに置き換えるべきか、ログから診断します
Rabona AI のAIコールセンターは、聞き取りが必要な一次受付・予約手続き・緊急度の振り分けを会話で完結させ、SMS送信・CRM記録・有人への取次までを一連のフローとして設計できます。現行IVRの操作ログをお持ちであれば、置き換えるべき分岐と残すべき分岐の切り分けからお手伝いします。
本ページで参照した出典
- 当サイト「AIコールセンターの費用相場」(2026年7〜8月、主要20サービスの料金公開状況を実査) — IVR・AI電話・ボイスボットの価格帯
- 当サイト「AIコールセンター導入事例27選」(2026年8月調査) — 公式リリースで原文確認できた27事例の自動化率実勢
- IVRy 公式導入事例(東急社宅マネジメント「一次受付の90%超の自動化」「月間800時間超削減」、2026年5月)
- トゥモロー・ネット「東京ガス株式会社に CAT.AI を導入」プレスリリース(2024年7月) — SMS併用・繁忙期AI完了率最大96%
- Rabona AI 導入事例「株式会社宝宮設備様」(2026年7月27日公開) — IVR見送りの判断と受電9割自動化
記載内容は2026年8月時点の公開情報にもとづきます。当社(株式会社Rabona AI)はAI電話サービスの提供事業者であり、本ページには自社サービスの案内を含みます。IVRが適するケースの記述を含め、特定の他社製品への評価ではなく方式の違いの整理です。
この記事の監修者
鳥邉 翔(株式会社Rabona AI 代表取締役)
電話業務のAI自動化を手がける株式会社Rabona AIの代表取締役。AIによる電話の受電・架電サービス「AIコールセンター」「AIテレアポ Rabona AI」などの音声AIプロダクトの開発・提供を統括している。本サイトの記事は、公開されている一次ソース(各社公式サイト・公式プレスリリース・公的統計)にもとづき編集部が執筆し、音声AIの開発・運用実務の観点から監修している。